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人生を楽しく生きるために 天命を信じ人事を尽くす
好きな歴史上の人物を教えてください
倉田百三

(大正・昭和初期に活躍した劇作家・評論家。十数年に及ぶ闘病生活の中で執筆活動を続け、『出家とその弟子』や『愛と認識との出発』など独自の宗教・哲学観を持った文学作品を数多く世に送り出した。)

倉田百三さんの著作に、親鸞とその弟子の生涯を戯曲にまとめた「出家とその弟子」という作品があってね。その出だしのところで
「おまえは何ものぞ」
「人間でございまする」
「死ぬるものだな」
…というくだりがあるんですが、中学3年の頃にこれを読んで「死ぬもんなんや、人間は」ということを思った。だからこそ大事に生きなあかんのやと、それが非常に強い自分の人生観になりましたね。
この人は生きることに一生懸命だったんやろうね。生きるということに対する真摯な態度を持ってる。自分をごまかさない、だからこそ罪の意識にも悩む、そこに仏の救いを求める。そういった世界が著作に現れていて、素晴らしい人やなあと思う。ここから、「生きるということに対してごまかしがあってはいけない」「自分自身を欺いてはいけない」といったことが自分の内面における座右の銘になってるなあ。

座右の書・感銘を受けた本を教えてください
坂の上の雲

司馬遼太郎著

(若いビジネスパーソンに薦めたい本として)

最近いろんなところで言われ出してることだけれども、日本人は日本人であることにもっと自信と誇りを持って欲しいなあと思う。なんか日本人はずいぶん悪いみたいに、やってきたことが全部まちがいやったみたいに言われますけどね。でも明治以来、世界的な科学技術の発明だってずいぶんたくさんあったし、非常に短期間のあいだに欧米列強の最新技術を身につけ、その列強と戦った。その辺が「坂の上の雲」に描いてある。もちろん戦争はまずい事だし、あったことを威張るつもりはないけど、日本人は他の民族と比べて決して劣ってるわけではないし、これまでしてきたこと全てが間違いじゃない。こういう本を読んで、歴史をもうちょっと冷静になって見て欲しいなあと思います。
習慣としていることを教えてください
よく眠ること
1日8時間は寝る、これが健康の秘訣。30歳のときに手術で胃を切ったことがあるんやけど、そのとき医者に言われたことをずっと守ってるんです。
そのままやったら命に関わるくらい胃が潰瘍でボロボロになっていたのを、何とか仕事の段取りをつけて手術したんですね。その1ヶ月後に会社でソフトボールをするという話になって。回復しつつあるといってもまだ体はガリガリやし、力も入らない。でもやりたくてその先生に「もうしばらくはダメですよねえ」と聞いてみた。するとその先生の言うことには、
「南部くん何言うてるんや、僕は君が世の中で活躍できるようにと思うて一生懸命手術したんや。ソフトボールでも何でもして来い。ただ今後は、体重を増やし過ぎないことと睡眠をちゃんととること。それだけ約束してくれ。頑張って世の中で活躍してくれ。」
…と、もう感動しましてねえ。いい先生にめぐりあえたと思うし、自分自身の「生きて頑張りたいんや」「会社をもっとこうしたいんや」という気持ちが伝わったんやなあと思います。
生き方・考え方に影響を与えていると思う出会い、言葉を教えてください
白川静先生との出会い

(立命館大学名誉教授。日本で唯一の漢字字源辞典を著すなど、漢字・漢文研究の第一人者として世界的に知られている。96年の生涯にわたって現役を貫き、研究・講演活動を続けた。)

大学でお世話になった先生。とにかくその雰囲気というか、本当に偉い人やという威厳があってね。1970年代の学園紛争のとき、多くの大学教授が吊るし上げられて研究も妨害されたりした。だけど、白川先生の研究室には誰も手を出さなかった。終始自らの学問姿勢を貫かれていたし、やっぱり学問に対する威厳が違ったんでしょうね。それに先生はこの紛争が一過性のものやということをわかってらっしゃった。だって3000年ほど前の字ばっかり見ているわけ。学園紛争なんて先生にとっては甲骨文のかけらよりも小さな出来事だったんじゃないかな。そんな些事にとらわれず、自分自身の人生を何に使うべきかっていうことに対する確固たる自信を持ってらっしゃったような気がする。白川先生の仕事や学問に対する態度は、何があろうと微動だにしなかった。あんな風になりたいと思うなあ。
最後に京都という地で事業を展開してよかったこと、大変だったことを教えてください
海外で有名な都市であること
もちろん国内でも有名。ちょっと前まで電話応対として「京都のナベルです」と言ってたぐらいでね。最近はそう言わなくても日本中の卵屋さんが知ってくれるようになりましたが。それにしても、京都というブランドは海外に対して、それも海外の教養人に対してとんでもない価値を持ってる。それを京都人の方が意識していないのかも知れんね。そういう意識をして欧米のいろんな人に話をしてみたらいいんですよ。彼らは京都に行きたがるし、日本の文化の話を聞きたがる。彼らが一番軽蔑するのはやっぱり西洋かぶれした日本人なんやね。日本人として普通にしてくれるほうがいいと言う。そんな彼らに対して、ここは日本やと伝える。東京や大阪は国際都市だからニューヨーク、上海と変わらない。京都こそ日本ですよ、と言う。そうやって京都に来てください、うちの会社に来てください、というのは効果があるんですよ。
(記載内容は2007年7月時点における情報です)