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‘自分の常識’を捨ててこそ信頼が生まれ、思いは伝わる
好きな歴史上の人物を教えてください
吉田松陰

(幕末の思想家、教育者。私塾松下村塾の主宰者として木戸孝允、高杉晋作を初め久坂玄瑞、伊藤博文、山県有朋、吉田稔麿、前原一誠等維新の指導者となる人材を教える)

織田信秀

(戦国時代の尾張国の武将。織田信長の父)

『尊敬する』となるとちょっと難しいんだけど、『会ってみたい歴史上の人物』とするとこのふたりですね。
もともとは信長が好だったんです。幼い頃から父が洋菓子店を営んで、どんどん店舗を拡大していく様を見ていたし、自分自身も競争して勝つというようなところに身を置いてきて、ある意味、より大きな力を掴み取るというような信長の生き方が痛快でした。
だけど、だんだん自分が大人になっていく中でね、人間離れした力や強い意思で歴史に名を残した人よりも、その周辺にいる等身大の人たちの方に目が向いてきた。そうすると、この織田信秀とか吉田松陰とかは、自分の駄目さや小ささみたいなものを知りながらも、立派な人を見抜き、育てたというところが好きだなと感じるんですよね。
特に吉田松陰なんかは、直接指導した時間は非常に少ないながら、明治の元勲を何人も育てている。その具体的な方法論を、ぜひ会って聞いてみたいと思いますね。
座右の書・感銘を受けた本を教えてください
上司の哲学

江口克彦著

他、松下幸之助氏関連の本

「経営者としてどうあるべきなんだろうか」と思って読み始めたのが、松下幸之助氏関連の本です。特に、この『上司の哲学』には松下氏の一言一句、どういう場面でどんなことを言ったのかということが書かれている。著者の江口さんはずっと松下幸之助氏の真横で仕事をされていた人ですから、この本は松下氏の肉声のようなものです。文字も大きくて読みやすいですから、ウチの社員にも「部下を持ったときの入門書として読んだらいいよ」と勧めているんですよ。部下への対応の具体例が随所にあって、自分だったらどうするだろうかと、思わず考えさせられますね。
習慣としていることを教えてください
あらゆる人から学ぼうとしていること
僕はバイカルに入るまで、同質の人たちの中で同質の競争をしていたんですね。基準はどいつが頭がいいとか、どいつが仕事ができるとかね…。同じ価値観を持つ集団ですよ。ところが、バイカルに帰ってきたら、同質の競争なんてどこにも無い。みんなバックグランドが違って、良しとするものが違う。そんな中で最初は「なんでこんな当たり前のことがわからんねん」と思っていましたよ。
でもいろんな社員と話をするうちに、今まで自分が重要視してこなかった価値の中にも大切なことがあると気づきはじめたんですね。「この社員は論理的思考は苦手やけど、人をその気にさせるのがうまいなあ」とかね。そして、「このいろんな価値観の溢れる場所で自分が成長したかったら、周りの人を先生にするしかない」と思ったんですよ。それからは常に自分で良しとするものを選んで、それを取り込んでいくという姿勢を持とうと思っています。そういう目で見ると、どんな出来事や人からでも何かしら学べるものがありますよ。
生き方・考え方に影響を与えていると思う出会い、言葉を教えてください
人は城 人は石垣 人は堀 情は味方 仇は敵なり

取引先社長から渡された雑誌付録のテープに入っていた戦国武将武田信玄の言葉

10年程前のことでしょうか。特に『情は味方 仇は敵なり』という部分には、苦しんでいた時期だけにハッとしました。社員に「この人の言っていることを聞いて成長したい」と思ってもらうためには、自分自身を変えて、決して相手を憎まず、情をかけながら、気づきを待つしかないんだと…。
ちょうどある社員に「私、この会社で誰一人尊敬できる人がいません」と言われたのも同じ頃ですかね。それで、「じゃあ、俺自身が社員の手本になろう。行動ひとつひとつに責任を持とう」と意識を変えたこともありました。
最近、その話をある社員にしたんですよ。彼は昨年の『西日本コンテスト』の優勝者なんですけど…。そしたら、彼も後輩の職人に「尊敬できる人がいない」と言われて、「『自分が彼らの目標になろう』と心に決めてきた」と…。実際その頃から、コンテストで賞を受賞して、積極的に技能士試験も受けているんですね。僕はねえ、実はこれがとても嬉しかったんですよ。お前もそう思ってくれたのか…とね。

最後に京都という地で事業を展開してよかったこと、大変だったことを教えてください
『京都の洋菓子』というものを考えるようになったこと
「日本の中において京都は特別である。本物とは京都のことである」と、あるデザイナーの方に言われたことで、「本物の街京都で、『京都人が作る、京都人のための、京都の洋菓子』というのはどういういうものなんだろう」と考えさせられまして…。そのデザイナーの方と一緒に新しく『古勝院NOBUAKI』というブランドを立ち上げたんです。京都の四季折々を現したスイーツや完全無農薬・有機栽培のカカオを使ったケーキなんかを置いて、『ここにしかない、唯一無二のもの』を提供できるお店づくりをしているんです。これは、京都に生まれてこの場所にいるからできること。本物を求められる厳しさはありますけど、とてもありがたいことだなと思いますね。
(記載内容は2007年5月時点における情報です)