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「ウィキペディア」英語版の歴史歪曲を放置するな−SAPIO2/28

誰でも参加できる百科事典として2001年に米国で登場。
50カ国以上で数百万件もの記事が掲載される「ウィキペディア」。
信頼できる情報源として急速に普及したこのネット事典に
困った現象が起きている。利用人口数千万人ともいわれる「英語版」で
日本の歴史問題に関する項目にトンデモ記事が跋扈しているというのだ。

最近、ウィキペディア(Wikipedia)というインターネット百科事典の
利用が急速に広まっている。日本語版、英語版のほか、各国語版があり
主要な言語はほぼ網羅されている。このウィキペディアの特徴は
特定の編集者・執筆者が存在せず、原則として利用者の誰でも記事の
投稿や編集ができることにある。

したがって、デリケートな話題、見解の対立する事項については
しばしば編集者(利用者)が自説を主張して削除や書き込みの
応酬となる「編集合戦」に発展する。そうなると、その記事は
管理者によってプロテクト(保護)されるとともに、記事の冒頭に
「現在論争中」を示すタグが貼り付けられ、利用者に注意が促される。
保護された記事は、一般の参加者から信任された「管理者」によって
編集されることになる。

このようにウィキペディアは、利用者間の「論争と改善」の過程を経て
中立な記事が形成されていくことが期待されている、言わば民主主義の
縮図のようなシステムである。しかしながら、利用者の関心が低い話題や
一般に認識が偏った事象については、「論争と改善」システムが正常に
機能しないため、トンデモない偏った記述が修正されないまま放置される
傾向がある。

困ったことに、英語圏における日中の歴史問題に関する項目が
この範疇に属している。
その代表例が、最近映画化で話題の「南京」で、その他にも
「第2次上海事変」などなど「論争中」の掲示もなく
中立的な要素もまったくなく、一方的に表現がなされているとのことだ。

対抗するには、編集や抗議などを行い、「論争」にもっていく
ことが必要なようだ。その点で成果が表れているのは、「論争中」の掲示
がされている「慰安婦」(Comfort Women)の項目だ。両論併記が実現しており
「暴力的に拉致」というイメージを与えるものではない。

どちらにしても、真実が明らかになっていないのであれば
それを究明する勇気と努力が不可欠だ。
そして、それが明らかになるまでは、もしくはならないのであれば
政治的な意図だけが一人歩きすることがないように注意が必要だ。

責任のないところには責任のない不正確な情報が流通し
責任のあるところには責任のある正確な情報が流通する。

これは、決してウィキペディアだけの問題ではない
就職活動をサポートする数々の掲示版も同じ状態だ。
反論、論争ができない分だけたちが悪いかもしれない。
誰かが悪意に満ちた意図を持って書き込みをしているとしたら
多くの仕事を探している人の将来をゆがめているかもしれない。

大切なことは、メディアが公平性を担保しているという幻想から
抜け出て、自らの意志で判断すること、そして、
署名記事のように責任の所在がはっきりしている
情報か否を見極めその確度を計る目を持つことだ。